前回は「鍼灸治療が自律神経を介して子宮血流を増やす仕組み(ラット編)」をご紹介しました。人間と同じ哺乳類であるラットにおいて「子宮の血流が自律神経によって調節されること」と「皮膚への刺激(鍼と同様の刺激)が自律神経の働きに作用して子宮血流を変化させること」の2点が分かりました。

今回は対象がラットからヒトに変わり、「鍼灸治療が自律神経を介して子宮血流を増やす仕組み(ヒト編)」をご紹介します。

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改めて、妊娠の確率を上げるための鍼灸治療を行う際の2つの狙いを確認します。

  • 卵胞を育てるために「卵巣の環境を整える」こと
  • 着床を容易にする、また着床後の受精卵が順調な成熟を遂げるために「子宮内膜環境を整える」こと

の2つです。今回ご紹介する内容が2つの狙いにつながります。

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  1. ヒトの子宮内の血管抵抗を血流計で測定しながら、
    ◆T12-L2、S2-S3のデルマトーム領域(おそらく腰から臀部のツボです)の経穴に100ヘルツで鍼通電刺激
    ◆ふくらはぎの筋肉に2ヘルツで鍼通電刺激
    を行い、観察しました。
  2. 鍼通電刺激によって、子宮動脈の循環抵抗が減少しました。(=「血流が増えた」ということです)
  3. 鍼通電刺激で子宮動脈の血流が増えた仕組みは、鍼通電刺激が子宮血管を支配する交感神経の興奮を抑制して血流が増加した、と考えられています。

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上記内容を分かりやすくすると「鍼通電の刺激が自律神経を介して子宮の血流を増やす」ということです。子宮に血液を運ぶ子宮動脈は、卵巣に血液を運ぶ卵巣動脈と合流しているので、子宮の血流を増やすことができれば、卵巣の血流も同時に増やせる可能性が高いです。「卵巣の環境を整える」「子宮内膜環境を整える」は同じ鍼治療の方法で両立できる方法だと考えています。

実際の臨床では、上記の方法をそのまま行うのではなく、多くの鍼灸師が検討した結果、いまの段階で最も適格と考えられている方法をとっており、体外受精の採卵成績や受精卵の成熟成績でも効果が確認されています。