妊娠の確率を上げるための鍼灸治療を行う際、大きく2つの狙いがあります。

  • 卵胞を育てるために「卵巣の環境を整える」こと
  • 着床を容易にする、また着床後の受精卵が順調な成熟を遂げるために「子宮内膜環境を整える」こと

これらには根拠があります。今日は第一弾として「鍼灸治療が自律神経を介して子宮血流を増やす仕組み(ラット編)」です。

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ラットの子宮で観察された実験結果を解説します。

ラットと聞いて「人間と違うじゃん。そんなのあてにならないよ。」と感じる方もいるかもしれませんが、医学などのヒトの体に関する研究をする際には、ヒトの体と似た仕組みと働きを持つ動物を用います。現代医療の様々な治療法も、多くは動物を使って得られた膨大な知見をもとに、ヒトに対して使えるように応用していったものです。

  1. ラットの子宮体部の血流を機械で測定しながら、ラットの体の様々な皮膚領域にピンセットで摘まんで侵害刺激を加えると、仙髄支配領域の皮膚(会陰部や後肢足蹠)への刺激が子宮血流を増加させます。
  2. 会陰部の皮膚を歯ブラシでこする非侵害性のブラシ刺激も子宮血流を増加させます。
  3. 子宮を支配する骨盤神経を切断すると、これらの反応が消失します。
  4. 1と2では、皮膚に刺激を与えたとき、刺激場所や刺激方法の組み合わせによっては、子宮血流が増加するということが分かりました。
    3では、子宮に分布している骨盤神経を切断することで1と2の反応が消えるので、子宮血流の増加は骨盤神経(=自律神経)を介して起こることが確認されました。

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一般に子宮の機能調節は卵巣から分泌される性ホルモンの増減で調節されていることが着目されていますが、
この実験結果から、子宮が自律神経によって血流量を変えていることが分かりました。また、皮膚への刺激(鍼と同様の刺激)が自律神経の働きに作用して、子宮の血流を変化させることも分かりました。

実は、鍼灸に関する基礎研究には、今回ご紹介したような動物を対象としたものしか分かっていない分野も多くあります。しかし、この実験は、後にヒトで行われた鍼の刺激と子宮血流の変化に関する実験につながります。