写真:岡井崇 他編(2011)『標準産科婦人科学』医学書院 p.72

不妊原因の一つである頸管因子の検査としてフーナーテスト(ヒューナーテスト、性交後検査、PCT)があります。

手元に一般の方向けの不妊治療の書籍が数冊ありますが、これらの一般書ではフーナーテストに関して、「抗精子抗体の有無をみる意義がある」「しかし、頸管粘液の状態に検査結果が左右される上、血液検査で抗精子抗体の有無がわかるので、現在は意義が低い」という旨のことが説明されています。

別の専門書(『図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編 第3版』)の中で、フーナーテストについて上記の一般書とは異なる説明がありました。一定期間以上の不妊のご夫婦や、30代後半以降の女性にとっては、検査結果の意味を理解する上で非常に参考になる内容ですのでご紹介します。

【目次】

1. フーナーテストと頸管粘液検査

1-1. 頸管粘液検査

1-2. フーナーテスト

2. フーナーテストの結果からどのように治療方針を決めるか

2-1. フーナーテスト異常はAIH(人工授精)またはART(生殖補助医療)の適応

2-2. フーナーテスト正常で長期不妊や高齢女性では速やかにART(生殖補助医療)へステップアップしたほうがよい(「図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編」)

3. ART(生殖補助医療)へステップアップした場合の鍼灸治療

 

 

1. フーナーテストと頸管粘液検査

フーナーテストと頸管粘液検査は、不妊原因の一つである頸管因子の検査法です。

頸管因子とは、「子宮頸管の形態異常」や「精子-頸管粘液不適合による精子の子宮への侵入障害」などに基づく不妊原因です。

1-1. 頸管粘液検査

頸管粘液検査では、性交後に採取した頸管粘液の量・硬さ・牽糸性を確認します。

本来、頸管粘液のpH測定は含まれませんが、pHが一定範囲を外れると精子の運動が障害されたり精子の生存性が低下するため、pH測定は臨床的に意義が高く、同時施行されることがあります。

頸管から分泌される頸管粘液は、エストロゲンの影響を受けて周期的に量・質・性状を変化させます。

排卵期に近づくと量が増え、水様透明で牽糸性も上昇し、スライドガラスに塗布して乾燥させたときの性状も羊歯状結晶となります。この変化によって精子が子宮頸管を通過できます。

1-2. フーナーテスト

フーナーテストは、排卵直前に施行します。頸管粘液が精子を通過させる性状へ変化した時期です。

フーナーテストの結果不良は、男性因子、抗精子抗体による免疫因子、頸管の炎症や解剖学的異常などが原因となります。

フーナーテストと頸管粘液検査の同時施行により女性因子の一部が明確になり、不妊原因が推定しやすくなります。

 

2. フーナーテストの結果からどのように治療方針を決めるか

フーナーテストの結果は

2-1. フーナーテスト異常はAIH(人工授精)またはART(生殖補助医療)の適応

フーナーテスト(PCT)の異常は、表で示した内容の原因があり治療困難なものも含まれます。

柴原浩章 他編著 (2016) 『図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編 第3版』 中外医学社 p.193

治療可能性を検討したうえで、原因及びその他の要因に応じてAIHあるいはARTが選択されます。

2-2. フーナーテスト正常で長期不妊や高齢女性では速やかにART(生殖補助医療)へステップアップしたほうがよい(「図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編」)

フーナーテストが正常な場合、一義的には表に示したような女性因子および男性因子の原因がないと考えられます。よって、フーナーテスト正常で不妊期間が短いケースでは、自然妊娠が期待できます。

しかし、1年以上の不妊期間を有する場合は別です。「正常=頸管因子は問題ない」「異常=頸管因子に問題がある」という解釈だけでは不足しています。

参考文献②によれば、

スクリーニング検査でART(生殖補助医療)の適応となるような異常を認めなかった症例におけるAIH(人工授精)の累積妊娠率を検討したところ、

PCT(フーナーテスト)異常例が48.9%であったのに対し

PCT(フーナーテスト)正常例は24.6%であり、

妊娠達成期間に有意差(p<0.0001)を認めた。

というように、一定以上の不妊期間を有する場合は、フーナーテストが正常なケースのほうが、人工授精で妊娠しにくい方の割合が多いことをデータで示しています。

その理由は以下のように書かれています。

PCT(フーナーテスト)が子宮腔に精子が侵入できるか否かの指標であるなら、

PCT(フーナーテスト)が正常な不妊カップルは卵のピックアップと輸送、受精、胚発生、および着床に問題を抱えていると推測される(図2-31)。

柴原浩章 他編著 (2016) 『図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編 第3版』 中外医学社 p.194

つまり、

フーナーテスト正常で不妊期間が一定以上のカップルでは、精子が子宮腔に侵入できてもほかに妊娠を妨げる要因がある可能性が高いこと

フーナーテスト正常で不妊期間が一定以上のカップルで、不妊原因として推測される「卵管輸送・受精・胚の発生・着床」の問題は、人工授精では解決策にならないこと

が説明されています。

また、上記要因を回避・解決するには、卵管の器質的異常に対する外科的治療やARTが必要なことにも言及しています。

「フーナーテストの意義は低い」という一般書の記述を一番最初に示しましたが、

ご紹介したかったのは、「一定以上の期間の不妊、また女性の年齢が高い場合は、AIHかARTかを選択する際にはフーナーテストの結果は重要」という内容でした。この内容が当てはまるか当てはまらないはケースバイケースですが、ご参考になればと思います。

参考文献
①岡井崇 他編(2011)『標準産科婦人科学』医学書院
②柴原浩章 他編著 (2016) 『図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編 第3版』 中外医学社

 

3. ART(生殖補助医療)へステップアップした場合の鍼灸治療

フーナーテスト正常で一定期間以上の不妊の場合は、「卵のピックアップと輸送、受精、胚発生、および着床に問題を抱えている」と引用部分で書いたとおりです。

卵のピックアップや輸送のみに問題を抱えているのであれば、ARTにステップアップすれば短期間で妊娠に至る可能性が高いので、鍼灸治療に訪れるケースは多くはありません。

ARTにステップアップしても良い結果が得られない場合、上記の「受精、胚発生、及び着床に問題を抱えている」というケースや、ARTで採卵の成績が良くないというケースです。こういう方々は鍼灸治療に多数来院されています。

ARTで良い結果が得られないとき、鍼灸治療の目標は採卵の個数と卵質の向上です。

週1回~5日に1回の治療頻度で3ヶ月間以上治療を行うことで、「採卵個数の増加」「受精後の培養成績の改善」という良い結果が出ています。